東京地方裁判所 昭和60年(ワ)1017号 判決 1986年7月15日
原告
安田和義
安田富美子
安田佳奈枝
安田佳奈枝法定代理人親権者父
安田和義
同母
安田富美子
原告
安田秀雄
安田百合子
右五名訴訟代理人弁護士
山口英資
南惟孝
被告
株式会社松下建運
右代表者代表取締役
松下貞清
被告
坂田元一
右両名訴訟代理人弁護士
大内猛彦
右訴訟復代理人弁護士
坂東規子
主文
一 被告らは、各自、原告安田和義に対し二五五万七二九〇円、同安田富美子に対し二一五万七二九〇円及び右各金員に対する昭和五九年七月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告安田和義及び同安田富美子のその余の請求並びに原告安田佳奈枝、同安田秀雄及び同安田百合子の各請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用のうち、原告安田和義及び同安田富美子と被告両名との間に生じたものはこれを一〇分し、その一を被告両名の各負担、その余を右原告両名の各負担とし、原告安田佳奈枝、同安田秀雄及び同安田百合子と被告両名との間に生じたものは右原告三名の各負担とする。
四 この判決は、主文第一項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、各自、原告安田和義に対し三九一五万五六四九円、同安田富美子に対し三四一五万五六四九円、同安田佳奈枝、同安田秀雄及び同安田百合子に対し各二〇〇万円及び右各金員に対する昭和五九年七月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 事故の発生
(一) 日時 昭和五九年七月三日午後四時三五分ころ
(二) 場所 埼玉県入間郡大井町鶴ケ岡二丁目二八番三五号先路上(以下「本件事故現場」という。)
(三) 加害車 普通貨物自動車(練馬一一い七八八三)
(四) 右運転者 被告坂田元一(以下「被告坂田」という。)
(五) 被害者 訴外安田壮宏(以下「壮宏」という。)
(六) 事故の態様 被告坂田は、本件事故現場で、壮宏が運転する子供用自転車の右側部に加害車左前部を接触させて同人もろともこれを転倒させ、その左後輪で同人を轢過して死亡させた。(以下「本件事故」という。)
2 責任原因
(一) 被告坂田は、加害車を運転して本件事故現場に差しかかり、赤色を示していた対面信号に従つて一時停車したのち、青色信号に従つて再び発進した際、壮宏が子供用自転車を運転して加害車の左前方を走行していたにもかかわらず、前方及び側方に対する注意を怠り、また、不適切なハンドル及びブレーキの操作をした過失により本件事故を発生させた。したがつて、民法七〇九条により、原告らの後記損害を賠償する責任がある。
また、同被告は、加害車を自己のために運行の用に供していた者でもあるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条により、原告らの後記損害(ただし、自転車破損による損害を除く。)を賠償すべき責任がある。
(二) 被告株式会社松下建運(以下「被告会社」という。)は、運送業を営み、被告坂田を雇用していたものであるところ、本件事故は、被告会社の事業の執行中に生じたものであるから、民法七一五条により、原告らの後記損害を賠償する責任がある。
また、被告会社は、加害車を所有し、自己のために運行の用に供していた者であるから、自賠法三条により、原告らの後記損害(ただし、自転車破損による損害を除く。)を賠償すべき責任がある。
3 損害
(一) 壮宏の損害
(1) 逸失利益 四一九八万一二九九円
壮宏は、本件事故当時四才の男児であり、本件事故に遭遇しなければ平均余命の範囲内で六七才まで就労が可能であつた。また、両親である原告安田和義(以下「原告和義」という。)及び同安田富美子(以下「原告富美子」という。)は、長男であつた壮宏の大学進学を当然の前提と考えていたし、それは両親の経済状態や我が国社会における進学率の高まり等からみて可能かつ確実であつた。したがつて、壮宏は二二才で大学を卒業し六七才までの四五年間就労可能であつたものと考えて、昭和五九年賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計による男子大卒者の平均賃金を基礎とし、今後少なくとも二〇年間は毎年約五パーセント程度の物価上昇・賃金上昇が続くことが高度の蓋然性をもつて予測できるから、同人が大学卒業に至るまでの間は中間利息の控除をせず、二二才になつた時点以降についてのみ年五分の割合による中間利息控除をライプニッツ方式で行い、生活費控除率を五〇パーセントとして同人の逸失利益を算出すると、次の計算式のとおり四一九八万一二九九円を下らない。
(計算式)
四八九万四一〇〇円×(一−〇・五)×一七・七七四=四三四九万三八六六円
(2) 自転車破損による損害三万円
(3) 慰謝料 一五〇〇万円
壮宏は、本件事故の結果死亡したもので、本件事故に遭遇しなければ将来楽しい学校生活を送り、青春を謳歌し、結婚して家庭を築くなど充実した人生を過ごしたであろうことを考慮すると、同人の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は一五〇〇万円を下らない。
(4) 相続
壮宏は右損害賠償請求権を有するところ、原告和義は壮宏の父、同富美子はその母であり、いずれも壮宏の相続人であるから、同人から右損害賠償請求権をそれぞれ二分の一ずつ相続した。
(二) 原告和義及び同富美子の損害
(1) 葬儀費用 合計一〇〇万円
右原告両名は、右金額をそれぞれ二分の一ずつ負担した。
(2) 仏壇仏具購入費用 合計三〇万円
右原告両名は、右金額をそれぞれ二分の一ずつ負担した。
(3) 慰謝料 合計一〇〇〇万円
壮宏は本件事故当時可愛い盛りであつて、右原告両名は、父母として同人に深い愛情を注いでいたのであり、その将来に大きな期待を寄せていた。しかるに、被告坂田は、右原告両名から最愛の長男を一瞬にして奪いながら、法廷においていささかも反省の情を示さず右原告両名の感情を逆なでした。
したがつて、右原告両名の精神的苦痛を慰謝するためには、被告坂田に対する制裁の意味も含め、各五〇〇万円の慰謝料をもつてするのが相当である。
(三) 原告安田佳奈江の損害
慰謝料 二〇〇万円
原告安田佳奈江(以下「原告佳奈江」という。)は、壮宏の妹であり、本件事故当時母親の運転する自転車の後部座席から本件事故を目撃した。日ごろ親しく遊んでいた兄が目の前で事故死したことによる精神的衝撃は大きく、右原告の精神的苦痛に対する慰謝料は、二〇〇万円を下らない。
(四) 原告安田秀雄及び同安田百合子の損害
慰謝料 合計四〇〇万円
原告安田秀雄(以下「原告秀雄」という。)及び同安田百合子(以下「原告百合子」という。)の両名は、壮宏の祖父母であり、本件事故により最愛の孫を失つた同原告らの精神的苦痛に対する慰謝料は、各二〇〇万円を下らない。
(五) 弁護士費用 五〇〇万円
原告らは、被告らに対し右損害の賠償請求をするため、原告ら訴訟代理人に対し本件訴訟の提起及びその追行を依頼し、原告和義において、原告ら訴訟代理人に対し、その手数料及び報酬として五〇〇万円の支払を約束した。
4 結論
よつて、被告ら各自に対し、原告和義は右損害金三九一五万五六四九円、同富美子は三四一五万五六四九円、同佳奈枝、同秀雄及び同百合子は各二〇〇万円及び右各金員に対する本件事故の日である昭和五九年七月三日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1(事故の発生)の事実のうち、(六)の、加害車と壮宏が乗車中の子供用自転車との接触の部位の点は否認し、その余は認める。
2 請求原因2(責任原因)の事実のうち、(一)の被告坂田の過失は否認し、その余は認める。
3 請求原因3の事実について
(一) (一)のうち、(4)の、原告和義が壮宏の父、同富美子が母であり、壮宏の相続人であることは認め、その余はすべて否認する。(1)(壮宏の逸失利益)については、原告ら主張に係る賃金センサスによる男子労働者の平均賃金を基礎とし、同人が二二才に至るまでの間についても、年五分の割合による中間利息控除をライプニッツ方式で行うべきである。
(二) (二)はすべて否認する。
(三) (三)のうち、原告佳奈江が壮宏の妹であることは認め、その余は否認する。
(四) (四)のうち、原告秀雄及び同百合子が壮宏の祖父母であることは認め、その余は否認する。
(五) (五)は否認する。
三 抗弁
1 過失相殺
本件事故現場は、上福岡市方面から所沢市方面に通ずる幅員約八・六メートルの交通頻繁な県道上であり、道路南側にはガードパイプで幅員約一・二メートルの歩道が設けられているが、道路北側には歩道はなく、車道より若干高い有蓋側溝があるため、そこが歩道のようになつている。
自転車に乗車した母親と共に、子供用自転車に乗つて外出した壮宏は、右県道北側を走行中、先行した母親を追うのに夢中となり、赤信号のため停止していた加害者の左側を通過する際、バランスを崩して加害車の方に斜行又は倒れかかり、加害車の左前輪と左後輪の間の車体に接触し、折から発進した加害車の左後輪で頭部等を轢過された。本件事故は、右のようにバランスを崩して加害車に接触した壮宏の重大な過失と同人が幼少のため満足に自転車の操縦ができないにもかかわらず、交通頻繁な右県道を通行させ、しかも適切な走行指導をしなかつた母親である原告富美子の過失が競合して発生したものであるから、右両名の過失割合は合わせて七〇パーセント以上というべきである。
2 弁済
(一) 原告和義及び同富美子は、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から、一九五四万五八八〇円の支払を受けた。
(二) 原告和義及び同富美子は、被告会社から、葬儀費用として四五万四一二〇円の支払を受けた。
(三) 原告和義及び同富美子は、右の他、被告会社から、壮宏の治療費全額八万五七三〇円について支払を受けているが、右損害について前記のとおり過失相殺をすると右支払は過払となるので、右支払のうち過払分について同原告らのその余の損害に充当する。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1(過失相殺)の事実は争う。
2 同2(弁済)の事実のうち、(一)、(二)及び(三)の治療費全額八万五七三〇円について支払を受けていることは認める。
第三 証拠<省略>
理由
一請求原因1(事故の発生)の事実のうち、(一)ないし(五)及び加害車が本件事故現場で壮宏を左後輪で轢過して死亡させたことはいずれも当事者間に争いがない。
二そこで、被告らの責任原因について判断するに、請求原因2(責任原因)の事実のうち、被告坂田及び被告会社がいずれも加害車の運行供用者であること及び被告会社が被告坂田の使用者であり、本件事故が被告会社の事業の執行中に生じたものであることは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すると、以下の事実が認められる。
1 本件事故現場は、国道二五四号線と県道大宮・上福岡・所沢線との交差点から所沢市方面へ約五〇メートル進行した右県道の下り線上である。本件事故現場付近の右県道の車道幅員は、六・四メートルで、中央線により上下線が区分されており(上り線三・三メートル、下り線三・一メートル)、上り線側(南側)にはガードパイプによつて車道と区分された幅一・二メートルの歩道が設けられているが、下り線側(北側)には歩道はなく、車道部分に接して有蓋側溝があるため、その部分から北側一メートルが歩道のようになつている。路面はアスファルト舗装が施されて平坦乾燥しており、本件事故現場付近から前記交差点まではほぼ直線に近い。周辺は非市街地となつているが、パチンコ店や喫茶店が点在し、幹線道路にも近いため、車両の通行量は多い(別紙交通事故現場見取図参照)。
2 被告坂田は、加害車を運転して右県道下り線を所沢市方面から上福岡市方面へ向けて走行し、本件事故現場付近に差しかかつたところ、前記交差点の信号が赤色を示していたため、先行車両に続いて本件事故現場に停止した。
3 一方壮宏は、買物のため、自転車に乗つた母親の原告富美子に伴われ、自らは補助輪付子供用自転車を運転して右県道下り線左側端を所沢市方面から上福岡市方面へ向けて走行し、前記のとおり、赤信号のため一時停止していた加害車の左側を通過しようとしたが、先行する母親との間に距離が生じたことから、これを追うのに夢中の余り、加害車を追い抜いた直後に右寄りに斜行し、加害車の前部バンパー左端付近直前に出たため、折から青色に変わつた信号に従つて先行車に続いて進み始めた加害車の前部バンパー左端に接触して転倒し、加害車の左後輪に轢過されて即死した。
4 ところで、被告坂田は、青信号に従つて再び発進する際、加害車の左前方及び左側方の安全を全く確認しなかつたため、前説示のとおり、加害車の左側からこれを追い抜き、右方に斜行して左前部バンパー付近に出た壮宏に気付かず、漫然と加害車を直進させ、前部バンパー左端を同人に接触させて自転車もろとも転倒させ、左後輪で同人を轢過したものである。
以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右事実に徴すると、被告坂田は、赤信号による一時停止後、青信号に従つて再び発進するに際しては、自車の停止中その左側方を進行し追い抜いて行く車両のあることが予測されたのであるから、左サイドミラー及びアンダーミラーを一暼するなどしてかかる車両に対する安全を確認すべき注意義務があつたにもかかわらず、これを怠つた過失により本件事故を発生させたものというべきである。
したがつて、被告坂田は自賠法三条及び民法七〇九条に基づき、被告会社は自賠法三条及び民法七一五条に基づき、それぞれ本件事故により原告らが被つた損害を賠償すべき責任がある。
三進んで、原告らの損害について判断する。
1 壮宏の逸失利益 一八七〇万四三五八円
<証拠>によれば、壮宏は、本件事故当時満四歳の男児であつたことが認められるところ、本件事故に遭遇しなければ、壮宏は、経験則に照らし、一八歳から六七歳までの四九年間平均して賃金センサス第一巻第一表集計の学歴計・産業計・企業規模計による男子労働者の平均賃金と同程度の収入を得ることができたものと推認することができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
そこで、昭和五九年度における右平均賃金四〇七万六八〇〇円を基礎とし、生活費を五割控除し、ライプニッツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除する方式を相当として逸失利益の現価を算出すると、次のとおり一八七〇万四三五八円(一円未満切捨て)となる。
(計算式)
四〇七万六八〇〇円×〇・五×九・一七六=一八七〇万四三五八円
2 慰謝料 合計一三〇〇万円
原告和義、同富美子、同佳奈江、同秀雄及び同百合子が順次壮宏の父、母、妹、祖父及び祖母であることは当事者間に争いがない。
そこで検討するに、前記認定の本件事故発生の態様、右原告らと壮宏との身分関係、壮宏の年齢その他本件に現れた諸般の事情を考慮すると、壮宏が死亡したことに対する慰謝料は、壮宏本人について一〇〇〇万円、原告和義及び同富美子についてそれぞれ一五〇万円と認めるのが相当である。しかし、原告佳奈江、同秀雄及び同百合子については、右原告らの主張する事実は、未だ同原告らに固有の慰謝料を認めるのを相当とする事情とは認め難く、他にこれを認めるのを相当とする事情は見い出せないから、右原告らの慰謝料請求はいずれも理由がなく、失当といわざるをえない。
3 自転車破損による損害については、これを認めるに足りる証拠がない。
4 相続
壮宏は、右損害賠償請求権合計二八七〇万四三五八円を有するところ、原告和義及び同富美子が壮宏の父母であることは前認定のとおりであるから、右両名は、壮宏から右損害賠償請求権をそれぞれ二分の一ずつ(一人当たり一四三五万二一七九円)相続したものである。
5 葬儀費用 四五万四一二〇円
<証拠>を総合すると、原告和義及び同富美子は、壮宏の葬儀費用四五万四一二〇円をそれぞれ二分の一ずつ(一人当たり二二万七〇六〇円)負担したものと認められる。
6 仏壇仏具購入費用 二八万九五四〇円
<証拠>を総合すると、原告和義及び同富美子は、壮宏のための仏壇仏具を購入する費用として二八万九五四〇円をそれぞれ二分の一ずつ(一人当たり一四万四七七〇円)負担したものと認められる。
7 過失相殺
前記認定事実によれば、壮宏には、母親の後を追うのに夢中の余り、四囲の安全に対する配慮を欠き、自転車の操縦を誤つて右寄りに斜行し、加害車の前部バンパー左端付近直前に出た過失が認められるほか、同人の母親である原告富美子には、本件事故当時わずか四歳の幼児であつて、自転車の操作も未熟と思われろ年齢にある上、四囲の状況を把握しながら予測される危険に対し適切な対応をとつて運転する能力などほとんど有しないといつて過言ではない壮宏を、安易に交通量の多い県道に連れ出し、しかも、前記認定のとおり一人先行し、同人に対し適切な指導、監督を行わなかつた過失があることを否定できない。
そこで、右認定に基づいて、双方の過失を勘案すると、本件事故の発生についての過失割合は、被告坂田について七割五分、壮宏及び原告富美子の被害者側が二割五分とするのが相当である。
ところで、原告和義及び同富美子が、壮宏の治療費として八万五七三〇円をそれぞれ二分の一ずつ(一人当たり四万二八六五円)負担したことは当事者間に争いがない。
そこで、右両名の前記損害賠償請求権に右治療費をそれぞれ加算した金額(それぞれ一六二六万六八七四円)から、壮宏及び原告富美子の右過失を被害者側の過失として二割五分減額すると、それぞれ一二二〇万〇一五五円(一円未満切捨て)となる。
8 損害のてん補
原告和義及び同富美子が、右損害に関し、自賠責保険から一九五四万五八八〇円及び被告会社から合計五三万九八五〇円の各支払を受けたことは当事者間に争いがない。右争いのない事実に弁論の全趣旨を合わせて検討すると、原告和義及び同富美子は、それぞれその二分の一(一〇〇四万二八六五円)を右両名の前記損害にそれぞれ充当したことが認められる。
したがつて、原告和義及び同富美子の残損害額は、右両名それぞれにつき二一五万七二九〇円となる。
9 弁護士費用
弁論の全趣旨によれば、原告らは、本件訴訟の提起及び追行を原告らの訴訟代理人に委任し、原告和義が右代理人に対して相当額の費用の負担を約したことが認められるところ、本件事案の内容、訴訟の経過及び請求認容額その他諸般の事情に照らすと、弁護士費用として被告らに損害賠償を求め得る額は、原告和義及び同富美子のそれぞれにつき二〇万円(合計四〇万円)と認めるのが相当である。
四以上のとおりであるから、原告らの本訴請求は、被告ら各自に対し、原告和義が二五五万七二九〇円、同富美子が二一五万七二九〇円及び右各金員に対する本件事故の日である昭和五九年七月三日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからいずれもこれを認容することとし、右原告両名のその余の請求及びその余の原告らの請求は理由がないのでいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官塩崎 勤 裁判官藤村 啓 裁判官潮見直之)
交通事故現場見取図<省略>